グリコのママ語翻訳「おしえてこぺ」女性の言葉を”解釈”する抑圧

グリコの「パパのためにママの言葉を”翻訳する”」というコンテンツが炎上しています。
それはそれはグロテスクな内容になっています。


おしえてこぺとは? 非科学的な女性脳・男性脳


「おしえて!こぺ!」とは、パパとママのコミュニケーションのミスマッチを無くすために、こぺというキャラクターがママの言葉の「本音」を教えてあげるという内容のグリコのコンテンツです。

トップページには「パパとママの脳の違い」などと男性脳・女性脳を連想させる言葉が躍っています。
非科学的な内容であることが読み取れます。

あわせて読みたい男性脳、女性脳は似非科学である

女性の言葉を「翻訳」 女性の人間性の無視

まず、女性の言葉を「翻訳」すること自体が間違っています
女性の本音の「正解」を他者が決めるなど、女性の人間性を軽視した行為です。

女性は人間なので、一人一人に考えがあり、一人一人違います。
女性という塊ではありません。

その人としての考えは、コミュニケーションをとることでしか理解することができません。
それにはまず、「当人の言葉を聴くこと」が必要です。

こんなに当たり前なことが女性相手だと分からなくなってしまう、これこそ女性差別です。

そして「女性は本音を言っていない」と決めつけるのは女性を抑圧する手法です。
過去ずっと、女性の言葉が男性にとって都合が悪い場合に「本音ではない」と見なされてきました。
そして男性側に都合のいい「解釈」をして口を封じにかかる。

グリコは企業としてそれに加担しています。

内容がひどい

ぐりこのおしえてこぺは内容がまたひどいです。

ケース①:オヤジ臭い

ママの言葉「これするの大変なんだからね!」

本音「感謝してね♡」

このなんとも言えないオヤジ臭さはなんなんでしょうね。
ハートがついているあたり、漫画に出てくるキャラクターのようです。

創作物に出てくる男性に都合のいい女性キャラクターを女性の正解と考えているような、そんな薄気味悪さを感じます。

私なら、「大変だ」は「あなたはこの作業が簡単だと思っているかもしれないが実は大変だ。だから分担しよう」という意味で使います。

ケース②:最終通告を無視

ママの言葉「一緒にいる意味ない」

ママの本音「私のこと、どう思ってるのかな?」
パパの対応「一緒にいるだけで意味があるのは君だけ」

「一緒にいる意味ない」は最終通告だと思うのですが…
だいぶパパに失望しきっていないと出てこない言葉だと思います。

それを「一緒にいるだけで意味があるのは君だけ」って返すの、鳥肌が立ちました。

「一緒にいる意味ない」というくらいですから、ママにだけ負担が偏っていて改善が見込めない状態になっているものと想像しました。
そりゃあそんな状態ならパパは居心地いいでしょうから、パパは一緒にいたいでしょう。

「ママの辛さを改善するつもりはない。これからも俺に都合のいい空間を提供しろ」と言っているかのように聞こえます。
怖いです。

ケース③:話の本質をずらし感情労働を強いる卑怯さ

ママの言葉「仕事と家庭とどっちが大事なの?」

ママの本音「私は家庭を優先しているのに、あなたは仕事ばかりなのが寂しいわ…」
パパの対応「寂しい思いをさせてごめん」といって仕事の愚痴を打ち明けてあげる

私は「仕事と家庭とどっちが大事?」は、「家事の負担が重いので分担してほしい。子供ともっと関わってほしい」という実務的な話だと思います。
いわば「家庭におけるパパ業をもう少ししてほしい」という意味です。

それに対して、「寂しさ」のような感情の話に持ち込んでママ側の問題と見なし、さらに仕事の愚痴を言うって狂気の沙汰ですよね。
そして「打ち明けて”あげる”」に異様なものを感じます。

そしてパパは愚痴を聞いてもらうことを期待しているわけです。
ママは傾聴、気遣いといった感情労働を強いられることになります。

パパは「今より家庭関わるにはどうしたらいいか」という課題の解決を放棄し、共感性を求める暴挙に出ています。
卑怯ですね。

まとめ

もちろんこの解釈通りの発想をしている人も中にはいると思います。
女性はそれぞれですから。
しかし、あまりに男性側に都合のいい解釈になっています。

男性は女性の「正解」を決めることで女性を抑圧してきました。
男性に都合のいい「正解」に則った女性を褒め称え、そこから外れた女性を非難・排除してきた歴史があります。

グリコは2019年にその抑圧を行っています。
グリコの意思決定プロセスの中に、女性の多様な意見が反映されていないということはよくわかりました。
やはりアファーマティブ・アクションで女性比率を引き上げていくことは、企業にとっても急務になっていると感じます。