偏見を持たないようにするにはどうすればいいのか?

私達の社会には様々な偏見・差別がはびこっています。
その偏見を低減させるためにはどうしたらいいのでしょうか?



偏見と差別


差別は「偏見をもとにした行動」であると定義されています。
差別の定義とは

そのため、差別をなくすためには偏見を減らすことがポイントになります。

偏見を持ちやすい人とは?

偏見を持ちやすい人とはどのような人なのでしょうか。

権威主義的な人

極端に偏見が強く、かつステレオタイプ的な性格を権威主義的性格(Adornoら)といいます。
この傾向が強い人はファシズム傾向も強いといいます。

ただし、強い偏見を持っている地域とそうでない地域の人々の間で、全体の権威主義得点に違いがないという知見(Pettigrew,1958)や、偏見が時間や状況によって変化するという知見(Pettigrew,1958)もあり、パーソナリティと偏見の間にみられる相関は、さまざまな社会・経済的状況によって引き起こされた疑似的な関連であるという指摘もあります。

自己を制御できない人

自己を制御できる程度と、偏見・差別を持つ程度は、負の相関を示すことが知られています。
つまり、自分をコントロールできない人の方が、偏見を持ちやすいということです。

認知的複雑性が低い人

認知的複雑性が低い人というのは、簡単に言うと、複雑な思考が苦手な人のことです。
偏見はある集団に当てはめられたイメージのことなので、個人差について考えることが出来ない人(=認知的複雑性の低い人)の方が偏見を持ちやすいと言えます。

曖昧さへの耐性が低い人

曖昧さへの耐性が低い人というのは、白黒はっきりさせたい人のことです。
このような人はある集団に対して偏ったイメージを持ちやすい傾向があります。


偏見が作られる要因

偏見は様々な要因によって作られます。

社会的影響

多くの偏見は、社会的影響によって作られます。
自分にとって重要な人や身近な人が偏見を持っていると、それを学習してしまうのです。

集団間競争

ある集団の間で資源を巡る競争が起こると、敵対する集団への攻撃を正当化するように偏見が発生します。

欲求不満の蓄積

ある集団の中においても、蓄積した欲求不満を解消させるためにだれかをスケープゴート化すると偏見が生まれます。

差別条項の設定

偏見を持っていない状態でも、何らかの差別条項を設定すると偏見が生まれると言います。

誤った関連付け

実際には偏見を持つ理由が無い状態でも、誤って関連付けてしまうことにより特定の集団に対する偏見が形成される可能性があります。

偏見の維持

社会に根付いた偏見は、多くの人が無批判に受容し、同調することで維持されます
心の中で偏見、差別に反対していても、態度に表さなければ黙認していることになり、差別をする側に加担していることになってしまうのです。

そして偏見を持った人による自己成就予言によって強化されます。
偏見を持った人は、偏見に合致する情報を記憶し、その集団に特有のものと認識し、反対に偏見に一致していない情報は無視する傾向があります。

自己成就予言と記憶しやすさについて

そうして偏見が強化されていきます。

偏見の解消

偏見を持つことが容易なのに対し、解消は非常に困難です。
特に偏見が強すぎる場合には、偏見を制御する努力をしなければなりません。

共通危機を回避する目標を持つ

二つの集団が対立している場合、共通の課題を与え、それを解決することを目標に協力すると、集団間の葛藤が氷解することがあります。

不満の解消

偏見を持つ人の社会的地位や満足度が上昇し、不満が解消されると、偏見も自然消滅すると言われています。

相互作用を深める

偏見の対象となる人とコミュニケーションをとることで、偏見が低減することが知られています。

注意点

ただし、このような場合は、偏見を持った対象とのかかわりが逆効果になることがあります。

・偏見を持った対象とのかかわり方自体が対立的な状態の場合
・集団間の地位が違いすぎる場合
・偏見を低減することを目的とする人がいない場合
・共同よりも競争が支配的な場合など

まとめ

偏見を無くすためには努力が必要不可欠です。
「自分が偏見を持たないようにするにはどうすれば良いのか」を考えるにあたって、「理解する」ということは大切なことだと思います。

【参考】
心理学辞典 有斐閣
社会的認知研究のパースペクティブ 培風館