そのステレオタイプを変化させるにはどうしたらいいのでしょうか。
ステレオタイプ的な考えを抑えるのは簡単ではない
ステレオタイプは現実世界を単純化し整理する機能があり、思考を節約できるという意味では便利なものです。しかしステレオタイプは偏見や差別につながる可能性もあります。
ステレオタイプは抑えようとして簡単に抑えられるものではありません。
抑えようとすると逆にステレオタイプが強まってしまうこともあります。
これをステレオタイプ抑制のリバウンド効果といいます。
●リバウンド効果
ステレオタイプに基づく反応を避けようと努力することによって、かえってステレオタイプ化が促進されてしまうこと。
ステレオタイプに基づく反応を避けようと努力することによって、かえってステレオタイプ化が促進されてしまうこと。
リバウンド効果が生じる理由
リバウンド効果の原因を知るには、まずステレオタイプ的な判断を”しないようにする”時に生じる認知処理を理解する必要があります。ウェグナーら(ウェグナー,1994;ウェグナーとエルバー,1992)は、ステレオタイプの抑制には「コントロールされた認知過程」と「自動的な認知過程」の2つが関連していると考えました。
「〇〇について考えてはいけない」という状況の時、大抵の人は「他の何か」を思い浮かべて禁止されたものを考えないようにするのではないでしょうか。
これがコントロールされた認知過程です。
そしてこの時、禁止された思考がきちんと抑制されているかを監視する過程が自動的に生じています。
これが自動的な認知過程です。
この自動的な過程では、禁止されたことが思い浮かばないように、禁止されたことに絶えず敏感になっていなければなりません。
これが逆に禁止されたことを無意識レベルで活性化させてしまい、リバウンド効果が生じてしまうと考えられています。
身近な例でいうと、ダイエット中に食べ物のことを考えないように他のことで気を紛らわせて我慢していると、通常よりも食べ物のことが頭に浮かんできてしまうことに似ています。
リバウンド効果を避けるには
ステレオタイプに反する考えを持つ
自動的な過程を生じさせにくくし、リバウンド効果の発生を避けるには、ステレオタイプに反する考えを持つことが有効だという研究があります(ブレアとバナジ,1996)。例えば、「女性は優しい、弱い」というステレオタイプに対して、「女性にも厳しい人や強い人がたくさんいる」という考えを意識的に持つなどが挙げられます(大江と岡,1999)。
平等主義を意識する
また、デヴァイン(1989)は、ステレオタイプを変化させるためには、偏見的な反応を抑制するだけではなく、平等主義的な新しい考えを、特定のカテゴリーに改めて結びつけることが必要だと述べています。
例えば、偏見の対象になっている属性を持った人に接する度に、平等主義的価値観を持つように心がけるということです。
短期的にはリバウンド効果を生じさせるかもしれませんが、長期的にみればステレオタイプや偏見を変容させる可能性があります。
まとめ
ステレオタイプや偏見を変化させるには長い時間や努力が必要です。
自然に解消するのは難しいということをよく自覚する必要があるでしょう。
ではまた♬