月魚(げつぎょ)を読んで 三浦しをん氏は天才だと思った

「月魚」を読みました!
これ!好きです!!!!!

月魚あらすじ

『無窮堂』は古書業界では名の知れた老舗。その三代目に当たる真志喜と「せどり屋」と呼ばれるやくざ者の父を持つ太一は幼い頃から兄弟のように育つ。ある夏の午後に起きた事件が二人の関係を変えてしまう。
引用:KADOKAWA「月魚」

月魚の感想

瀬名垣太一と本田真志喜という2人の男性が、過去に起こった「ある事件」を引きずるがゆえに核心に触れるやり取りができないまま、それでもお互いに求め合い、離れられない様子に、本格的な照れを感じながら読み進めました笑

この二人は付き合ってもいなければ「好きだ」とも言わず、そして性的な描写もない(ラストは…笑)のですが、二人の間にあるのが恋愛感情だということは分かるようになっています。

流麗な文体や二人の落ち着いたやりとりは「静的」な印象を受ける一方で、二人の内面にある「お互いを求める熱」のようなものがメラメラとうごめいているような感じです。

文庫本の解説のあさのあつこ氏による「この寂寞、この官能」という表現がぴったり。
なんて言ったらいいのか分かりませんが、全体的にエロいです。
そうなんですエロいんです。

男女の恋愛では性欲やジェンダーロールを感じ取ってしまいがちな恋愛感情の描写も、男性同士だと純粋な相手への思いのように感じられるのでいいですね。
私は「誰かが誰かを強く思う話」が好きなので、この物語も大好きです。

三浦しをん氏は天才だと思った

で、私は三浦しをん氏ってすごいなと思いました。
(まぁ私が言うまでもなく皆すごいの知ってると思いますが…)

すごいと思ったのは、比喩表現の巧みさです。
例えば登場人物が障子を開けた後のこの表現。

冴えた月光は、澄み渡った銀色の触手で部屋を一撫でし、部屋の温度をますます下げた。
引用:月魚 p26

「銀色の触手で部屋を一撫で」
これ!
すごくないですか!!

どういう状況かはっきりわかる!!!!!!

自分では一生かかっても絶対に出てこない表現なのに、読んだらどういう情景か思い浮かぶ…
プロの技だな…と思って(当たり前ですが)、天才かよと思いました。

こういう澄んだ表現がたくさん出てくるので、読後感がいいです。
とてもきれいな小説なのでおすすめです!