人がいるとサボる?張り切る?作業量を最大化する環境づくりとは

このページでは「周りに人がいること」の効果についてご紹介してます。

人がいるとサボる…社会的手抜きとは




大人数で単純作業をしている場合、たくさんの人がいることがかえって一人一人の作業量を低下させてしまうことがあります。

これは社会的手抜きと呼ばれています。

●社会的手抜き
各人が同じ作業を行って全体の作業成績が評価される場合、作業への動機づけが低下して、人数が多くなるほど一人当たりの作業量が減る現象

社会的手抜きの原因は協調ロスと動機ロス

では、なぜ社会的手抜きがおこるのでしょうか。
その原因は協調ロス動機ロスという言葉で説明されています。


【協調ロス】クラヴィッツとマーティン(1986)が農業技師のリンゲルマンの論文を引用
各人が力を合わせる際に生じる損失のこと。
綱引きの場合、それぞれの人が綱を引く方向に多少のズレがあり、力が無駄になってしまう。

【動機ロス】インガム(1974)
作業へのやる気の低下。

社会手手抜きの防止

社会的手抜きはサボっているということなので、あまり好ましくありません。
ただ、作業している本人も知らないうちに手を抜いていることがあるので、本人に注意しても意味がない場合があります。

重要なのは、社会的手抜きが起こりにくい状況を作ることです。

それについて、ハーキンスとペディ(1982)をはじめとする研究が、社会的手抜きの対策方法を挙げています。

【社会的手抜きの防止法】
・作業を難しいものにする(誰でもできる単純作業にしない)。
・簡単な作業の場合は高い目標を設定する。
・可能であれば、それぞれの人に少しずつ異なる作業を分担させる。
・同じ作業を行う場合は、各自の分担を明確にする(誰がどれだけ作業を行ったか分かるようにする)
・各自にとって行う理由が明確な意味のある作業になるようにする。
・所属している集団が各自にとって魅力的になるようにする。

要するに、個人にとってその作業が意味のあるものになるよう、各自に対して難易度を変えたり、目標を設定したりする工夫が必要ということです。

人がいた方が頑張れる!社会的促進とは

反対に、周囲に人がいた方が作業がはかどる場合もあります。

トリプレット(1898)という心理学者が競輪選手の走行記録を分析し、単独、伴走者付き、競争状況と三つの状況を比べたところ、他の選手がいた時の方が成績が良いことを見出しました。

これは社会的促進と呼ばれます。

●社会的促進
周囲に人がいることによって作業量が増加(あるいは減少する場合も含む)する現象。

社会的促進によって、作業量が増加するかどうかは「慣れ」が関係していると考えられています。
ザイアンスとセイルズ(1965)によれば、慣れた作業を行っているときは、他者の存在によって作業成績が上昇し、逆によく慣れていない新しい作業をしているときには成績が低下したと言います。

慣れた作業をしている時はかっこいいところを見せようと、あるいは競争心が刺激されて張り切るのに対し、慣れていない作業の時は見られている緊張で上手くいかない…といったところでしょうか。

まとめ 各自の作業量を最大化するには

社会的手抜き、社会的促進を踏まえ、誰かに作業を割り当てる時、およびその作業中に気を付けるべきことをまとめました。
④までは社会的手抜き、⑤は社会的促進に関する項目です。

①各自の能力に応じた作業を割り当てる
②単純作業の時は各自に目標を設定する
③各自の分担・作業量を明確化する
④その作業をする理由をきちんと説明する
⑤慣れている作業は人がいる場所でしてもらう(反対に慣れていない作業をしている人を監視して圧力をかけない)

いずれにせよ、各人の能力、習熟度をある程度正確に把握する必要があります。
部下の仕事のペースが遅い…とお悩みの管理職の方は参考にしてみてください♪