親権を求める父親に感じる違和感

「母親が親権を持つのは不公平だ!」
「共同親権を!」
という意見を目にすることがあります。
私は、この意見に透けて見える「親権」の捉え方に不審なものを感じます。



親権とは何なのか

そもそも親権とは何なのでしょうか?

親権には2つの内容が含まれています。
①身上監護権
②財産管理権

つまり、未成年者の養育をして、そこで必要になる財産管理をするのが親権の内容です。

親権とは親の権利というより権利と義務の総称を指します。
「子供を養育する義務とそれに付帯する権利」であり、義務が先に存在するということです。

親権が母親にいくのは不公平か?

それを踏まえると、主に母親が親権を取得するのは当たり前です。

「男は父親の自覚を持ちにくい」
「男は女に比べて家事が苦手」
「男は働いているから家事をしなくてもよい」
と言って、実質的に母親一人で育児をしているような家庭は数多くあります。

離婚後の子供の生活の変化を最小限に抑えるには、主な養育担当者だった方に引き取られるのが自然です。
それが現在では母親であることが多いというだけです。

父親が育児・家事をするのが一般的になれば、父親が親権を持つことも増えていくのではないかと思います。

親権を欲しがる「違和感」

そのため、家庭生活の中で家事や育児にかかわることを避けてきた夫が、離婚に直面して親権を欲しがることに大きな違和感を覚えます。
今まで育児をしていなかったのに、離婚したら急にできるのでしょうか。
どうも彼らの頭の中からは「子を養育する義務」が抜け落ちているように見えるのです。

そもそも、父親は家事・育児をしない理由として「お金を稼いでいるから」を挙げることが多いです(共働きであっても)。
これは家族としての人間的な関わりを自ら放棄し、お金で解決しようとする姿勢です。

そのため親権を母親に渡した方が、彼らの望む形に近いように思えます。
子供が母親に引き取られた場合、父親は家事育児から逃れられる上、養育費で親の義務を果たすことができます。
これは彼らにとって願ったり叶ったりではないのでしょうか?

それにもかかわらず彼らが親権を求めるのには、「子供を育てたい、離れたくない」という意思とは別の意図があるように思えてなりません。

もっと直接的な言い方をすれば、
「子供が母親の”モノ”になるのが許せない」
「子供に権利を行使する立場を失うのが嫌だ」
という理由で親権を欲しがっているように見えます。

これらは女子供を家長の所有物としてみなす、家父長制の感覚です。

まとめ

親権を求める父親の意見には「負けてたまるか」という執念を感じます。
それは子供の福祉を守るという視点からかけ離れています。

そして「男女平等」の文脈でこれらが主張されることにも問題があります。
家庭内の役割分担が不均衡なまま親権の取得を平等にしても、子供に利益があるようには思えません。

なんとなく親権を「子供を利用できる権利」のようにぼやっと捉えているように感じ、不安を覚えます。