その効果や危険性(?)についてまとめました。
「弱さ」をアピールする意味とは
弱さをアピールする、いわゆる「哀願」の自己提示は、なぜ行われるのでしょうか。
世の中には「弱い人を助けなければならない」という社会規範があります。
相手に「自分はか弱い人間だ」「不幸な存在だ」ということを示すことに成功すれば、自分に対して手を差し伸べてくれる可能性が高まります。
その効果を期待しているといえるでしょう。
典型的な例では心理的、身体的な「調子の悪さ」を印象づけることなどが挙げられます。
「ストレスが溜まった」「疲れた」「寝てない」などです。
「哀願」の効果は?
この方法に成功すれば、他者からの助けを引き出す事ができます。その他にもいくつかの働きがあります(リアリーとミラー,1986)。
1つ目は社会的責任の回避です。
「気分が悪いので会議には出られそうにない」と伝えておけば、本来出席しなければならな会議から逃れることができます。
2つ目は相手に受け入れてもらいやすい理由になるという点です。
遅刻した時、「寝坊した」という言い訳よりも「体調が悪かった」といった方が正当性が増し、相手に受け入れてもらいやすくなる効果があります。
しかし、やり方を間違えてしまうと逆効果です。
「怠け者だ」「要求ばかりする人だ」などの否定的印象につながってしまう危険性があります。
また、相手が「自分を操作しようとする意図を持ってわざとやっているのではないか」と疑い目の眼を持ってしまったら効果は望めません(シュワルツ,1977)。
「本当に」体調不良でも同じ効果がある
ここまでの話は「本当に」心身に不調をきたしている場合でも、そこに自己アピール的な側面が含まれていることを示唆します。コイン(1967)の研究では、抑うつ的な人は「抑うつの症状を示すことによって、同情してもらったり元気づけてもらえるようになることに気がつく」ことを示しています。
逆に、実際の体調不良であっても「怠けている。仮病に違いない」と思われてしまえば否定的な印象を持たれてしまうリスクがあるということです。
まとめ
「弱さをアピールして助けてもらおうとしている」というのはほとんどの人の予想通りだと思います。しかし、その方略をうまく使いこなせている人は少数派だと思われます。
年がら年中「寝てない」アピールをしている人が良い印象を持たれているのを見たことがありません。
そして本当に体調不良の時に疑われてしまう可能性が高まるというデメリットもあります。
それにもかかわらず、この方法を使う人は後を絶ちません。
”ほどほどに”しないと難しいアピール方法だと言えるでしょう。