社会的手抜きとは
大人数で単純作業をしている場合、たくさんの人がいることがかえって一人一人のやる気を低下させてしまうことがあります。
これは社会的手抜きといいます。
●社会的手抜き
各人が同じ作業を行って全体の作業成績が評価される場合、作業への動機づけが低下して、人数が多くなるほど一人当たりの作業量が減る現象
各人が同じ作業を行って全体の作業成績が評価される場合、作業への動機づけが低下して、人数が多くなるほど一人当たりの作業量が減る現象
社会的手抜きの原因は協調ロスと動機ロス
その論文では、綱引きにおいて、プレイヤーが多くなるほど一人当たりの牽引量が低下することを発見し、その原因は協調ロスにあると指摘されています。
【協調ロス】
各人が力を合わせる際に生じる損失のこと。
綱引きの場合、それぞれの人が綱を引く方向に多少のズレがあり、力が無駄になってしまう。
各人が力を合わせる際に生じる損失のこと。
綱引きの場合、それぞれの人が綱を引く方向に多少のズレがあり、力が無駄になってしまう。
さらに、インガム(1974)の実験では、協調ロスの他に動機ロスが関係していることを示唆しました。
【動機ロス】
作業へのやる気の低下。
作業へのやる気の低下。
動機ロスを確かめた実験
動機ロスの存在は、このような実験によって明らかにされました。
●実験①
綱引きを一緒に行う人数を1~6人と変化させ、一人当たりの平均牽引量を測定。
【実験①の結果】
条件ごとの一人当たりの牽引量は、1人条件>2人条件>3人条件と低下していきました。(それ以降の人数では牽引量は低下せず)
この実験では、人数が多くなるほど牽引量が低くなる=社会的手抜きが起こることが確認されました。
●実験②
次に、協調ロスと動機ロスを区別するため、実験参加者に目隠しをして、実際には一人で綱を引いているけれども、他者と一緒に引いているかのように思わせる条件を加える。
この条件では実際に一人で綱を引いているので、力が分散する協調ロスは起こりません。
もしこの条件で、人数が多い(と思い込まされている)条件の人の牽引量が少なかった場合、縄を引くやる気が低下した動機ロスが起こったと言えます。
【実験②の結果】
実験①と同様に、社会的手抜きが発生しました。
つまり、動機ロスが発生していたのです。
綱引き以外の作業(ラタネ(1979)は大声を出したり拍手をする作業)でも同様のことが起こると確認されています。
社会手手抜きの防止
社会的手抜きは簡単にいうとサボっているということなので、あまり好ましくありません。
ただ、作業している本人も知らないうちに手を抜いているので、本人に注意するのではなく、社会的手抜きが起こりにくい状況を作ることが大切です。
それについて、ハーキンスとペディ(1982)をはじめとする研究が、社会的手抜きの対策方法を挙げています。
【社会的手抜きの防止法】
・作業を難しいものにする(誰でもできる単純作業にしない)。
・簡単な作業の場合は高い目標を設定する。
・可能であれば、それぞれの人に少しずつ異なる作業を分担させる。
・同じ作業を行う場合は、各自の分担を明確にする(誰がどれだけ作業を行ったか分かるようにする)
・各自にとって行う理由が明確な意味のある作業になるようにする。
・所属している集団が各自にとって魅力的になるようにする。
・作業を難しいものにする(誰でもできる単純作業にしない)。
・簡単な作業の場合は高い目標を設定する。
・可能であれば、それぞれの人に少しずつ異なる作業を分担させる。
・同じ作業を行う場合は、各自の分担を明確にする(誰がどれだけ作業を行ったか分かるようにする)
・各自にとって行う理由が明確な意味のある作業になるようにする。
・所属している集団が各自にとって魅力的になるようにする。
社会的促進とは
次は反対に、周囲に人がいた方が作業がはかどる現象を取り上げてみたいと思います。最初はトリプレット(1898)という心理学者が競輪選手の走行記録を分析し、単独、伴走者付き、競争状況と三つの状況を比べたところ、他の選手がいた時の方が成績が良いことを見出しました。
これは社会的促進と呼ばれます。
●社会的促進
周囲に人がいることによって作業量が増加し、あるいは減少する現象。
周囲に人がいることによって作業量が増加し、あるいは減少する現象。
社会的促進によって、作業量が増加するかどうかは「慣れ」が関係しているようです。
【ザイアンスのモデル】(ザイアンスとセイルズ,1965)
作業者が慣れた作業を行っているときは、他者の存在によって作業成績が上昇し、逆によくなれていない新しい作業をしているときには成績が低下する。
作業者が慣れた作業を行っているときは、他者の存在によって作業成績が上昇し、逆によくなれていない新しい作業をしているときには成績が低下する。
社会的促進と慣れの関係を示す実験
マイケルズら(1982)はビリヤードをしている人たちを実験参加者にして社会的促進現象を検討しました(ドォオとライツマン,1984)まず、あらかじめ各プレイヤーの腕前を確認し、平均以上の腕を持つ6ペアと平均以下の6ペアを選びました。
そしてその半分のペアにはテーブルのそばに四人の観客が立って彼らのプレイを観察し、残り半分のペアには観客がいないようにしました。
つまり、2(腕前:上・下)×2(観客:あり・なし)の4つの条件を比較しました。
この4つ条件のプレイヤーのショットの正確性を比べたところ、このような結果が出ました。
【結果:ショットの正確性】
平均以上のプレイヤー
⇒観察者が存在することによって71%から80%に上昇
平均以下のプレイヤー
⇒観察者が存在することによって36%から25%に低下
つまりビリヤードに比較的成熟しているプレイヤーは観察者がいることによって観察者がいない時よりも正確にショットできた一方、平均以下のプレイヤーは 逆に人から見られているとうまくショットできなくなってしまったというわけです。
まとめ
私たちは知らないうちに周囲からの影響を受けています。その影響を理解することは自分や他人を知ることに役立ちます。
この記事はこの本を参考に作成しました。
本にはより詳しいことが書いてあるので、気になる人はぜひ!
ではまた♬