「どういう条件がそろえば相手が自分の言うことを聞いてくれるのか」というのは大きな関心事です。
説得には様々な要因が関係していますが、「情報を与える側がどんな人か」ということも大きく影響しています。
では一体”どんな人”が言えば、相手に影響を与えられるのでしょうか。
専門性と信頼性のある人を人は信用する
「どんな人ならば相手に影響を与えられるのか」これは心理学の説得の分野で研究されています。
その要因として説得研究でよく挙げられているのは、信憑性です(ホブランド,1960)。
ここで言う信憑性は専門性と信頼性を合わせたものです。
日本語の使い方としては違和感があるかもしれませんが、この分野では「信憑性=専門性+信頼性」という使い方をしています。
●専門性:高度な専門的知識や機能を持っていること。
学歴、職業、経験度、話し方、情報源の明示、ユーモアなどが関係(オキーフ、1990)
●信頼性:事実や真実をどの程度相手に正直に伝えているかということ。
話し手の立場にとって不利なことを伝えると信頼性が高くなる(イーグリ、1978)。
学歴、職業、経験度、話し方、情報源の明示、ユーモアなどが関係(オキーフ、1990)
●信頼性:事実や真実をどの程度相手に正直に伝えているかということ。
話し手の立場にとって不利なことを伝えると信頼性が高くなる(イーグリ、1978)。
しかし、信憑性があるだけで相手が言うことを聞きやすくなるというわけではないようです(スティフ,1986)。
信憑性の効果を左右するものとは
「いつ」信憑性の情報を伝えるかが大事
信憑性の効果は「いつ」その情報をつたえるかで大きく変わってきます。
つまり、情報の与え手が持っている信頼性や専門性を、伝えたいことの前にアピールするか、後にアピールするかということです。
この分野の内容をまとめた研究によると、以下のような傾向があるようです。
◆情報の与え手の信憑性が低い場合
伝えたいメッセージの後に信憑性に関する情報をアピールした方が(前よりも)効果的(オキーフ,1987)
◆情報の与え手の信憑性が高い場合
伝えたいメッセージの前に信憑性に関する情報をアピールしたほうが(後よりも)効果的(オキーフ,1990)
伝えたいメッセージの後に信憑性に関する情報をアピールした方が(前よりも)効果的(オキーフ,1987)
◆情報の与え手の信憑性が高い場合
伝えたいメッセージの前に信憑性に関する情報をアピールしたほうが(後よりも)効果的(オキーフ,1990)
関心があると信憑性の影響を受けにくい
また、伝える内容が聞き手にとって関心があるかという点も、信憑性の効果に影響を与えます。情報の聞き手にとって関心が大きい内容の場合、与え手の信憑性の影響は小さくなります(ペティとカシオッポ,1986)。
元々関心があってある程度内容に精通している人は、相手の肩書などに影響されずに内容を元に判断できるということです。
聞き手の意見と説得の方向が同じかどうか
情報の聞き手の元々の考えによっても、信憑性の効果が変化します。聞き手が元々持っていた意見とは反対の方向に説得をする場合、与え手の信憑性が高い方が効果的です。
逆に、聞き手の意見に沿った内容の説得をする場合は、与え手の信憑性が低い方が効果的であるという傾向があります。
信憑性の影響は時間とともに低下する スリーパー効果
情報の与え手の信憑性は伝えた直後は有効ですが、時間の経過とともに、その影響力は低下していくことが知られています。これはスリーパー効果と呼ばれています。
◆スリーパー効果(ホヴランドとウェイス,1951)
時間が経つと与え手の信憑性と伝えたいメッセージの内容が分離され、信憑性情報の効果が減少してくる現象。
時間が経つと与え手の信憑性と伝えたいメッセージの内容が分離され、信憑性情報の効果が減少してくる現象。
ホヴランドとウェイス(1951)ではこのような結果がでました。
・信憑性の高い人の場合、メッセージを伝えた直後より4週間後の受け手の応諾度は低下
・信憑性の低い人の場合、逆に4週間後の方が応諾度が高い
つまりこれは、伝える内容が同じであれば、時間が経過するほど、信憑性の高い人と低い人の差がなくなってくるということを示しています。
※ただし、「信憑性の低い与え手の場合、時間が経過したの方が応諾度が高い」という結果は20の研究のうち9つ(アレンとスティフ,1989)のみで見られた傾向なので、安定した内容とは言えなそうです。
好感度が高い方がいい場合は限定的
一般的に、好感度の高い人の方が説得はうまくいくと考えられています。しかし、好感度の持つ影響力は限定的です。
オキーフ(1990)では、これらのことが明らかにされています。
①好感度よりも信憑性の効果の方が大きい
②好感度の効果があるのは、説得する内容が聞き手の関心が低いものである場合に限られる
好感度の性別ステレオタイプ
ただし、好感度の影響力は性別によって異なるという指摘があります(カーリ,2004)。一般に、女性軽視の残る社会では女性は男性よりも家庭的で社会的地位の低い職業に就かざるを得ないことを背景として、女性は男性よりも能力が低く、リーダーにふさわしくないというステレオタイプが形成されてきました。
このステレオタイプの影響により、女性が誰かに影響を及ぼそうとした場合、専門性や能力より好感度に基づいて働きかけないと相手を説得できないという傾向があると、カーリは指摘しています。
まとめ
今回は「何を言うか」よりも「誰が言うか」という観点の内容をまとめました。言うまでもなく、説得場面においては伝える内容が大切ですが、それを前提として、どのような人が説得しやすいのかを知っておくのは大切だと思います。
今回はこの本を参考にしました。
本にはもっと詳しいことが書いてありますので興味のある人は読んでみてください♪
ではまた♬