非難をかわす5つの方法

人と対立関係になったとき、相手が感情的に攻撃してくることがあります。
このような時にまともにぶつかり合うと精神的に疲れてしまいます。
そのような場合は戦略的に立ち回ることが必要です。


だいぶ古い研究なのですが、ネルソン=ジョーンズ(1993)では非難や批判に対処するための戦術がまとめられています。
それを元に、私見を交え、批判をかわす方法をまとめました。

非難をかわす方法

相手からの感情的な非難を防ぐためには、相手を逆なでするような言い方、表情にならないよう配慮が必要です。
そして次に述べる戦術はいくつか組み合わせて使うのが効果的です。

 ①反射の戦術

一つ目は反射の戦術です。
反射とは、非難や批判をしている相手の言葉の一部を話し相手に返すことです。
例えば「あなたが怒っているのは、私が約束破ったと思っているのですね。」と言うように返します。
これは相手の批判や批判を認めることが目的なのではなく、「あなたの言いたいことは分かった」というメッセージを表明することに意味があります。

相手の言い分を理解したというメッセージは相手の感情の高ぶりを落ち着かせる効果があります。

 ②分散の戦術

2つ目は分散の戦術です。
これは相手の非難や批判の一部を認める方法です。
論点を分割する点で、分散と表現されます。

 例えば「確かに、あなたの立場からすると約束を破ったと思われても仕方がないかもしれません。」と言うような言い方です。
相手は一部分であると自分の言い分が認められたと思い、非難の勢いが弱まると考えられます。
この戦術は非難の一部が実際に容認できる内容の場合は非常に有効です。

 しかし、無理やり容認しようとするとかえって反感を買ってしまうこともあるので注意が必要でしょう。

例えば先日、自分の発言に対して非難が相次いだ政治家がSNS上で「脊髄反射させるような書き方をして申し訳ない」と表明したことで、さらに非難が殺到するという出来事がありました。
これでは何を謝っているのか、本当に悪いと思っているのかが全く伝わってきません。
これは「一部を認める」ことと「とりあえず謝る」ことを混同した例だと言えるでしょう。

 ③質問の戦術

3つ目は質問の戦術です。
①反射か②分散のいずれか、もしくは両方の戦術を使った後に、さらに詳しい説明を求める方法です。

具体的には「私が約束を破ったと言うけれど、どうしてそう思うのか、もう少し詳しく教えてくれませんか?」というように相手に聞き返します。

このような質問は相手の言い分を詳しく聞くつもりがあることを示すので、非難の攻撃力を弱める働きをします。
また新たな情報が実際に得られて和解のきっかけになることもあります。

 また、相手に詳細な説明を求めるというのは、”ただ攻撃したい相手”かどうか見極めるのにも役に立つでしょう。
説明を求めた時に、さらに逆上する、理由なく説明を放棄して論点をずらすなどの態度が見られた場合は、相手はあなたとの意見のすり合わせを最初から望んでいない可能性があります。

 ④フィードバックの戦術

4つめがフィードバックの戦術で、相手が激高して人格攻撃をしてきたときに使うと効果的です。
これは、非難の「内容」と「仕方」を分離して、仕方について相手にフィードバックを与える方法です。

「言いたいことはわかったけど、そんな言い方しなくてもいいじゃないですか。」と言うように、「言い方」に焦点を当てます。

このように言うと相手は自分の言い方に注意を向けるので、非難や批判の勢いが弱まります。

対立場面では、人格を傷つけるような言い方をされることがあります。
そのような時はこの戦術を使うべきです。

しかし、相手の怒りに正当性がある場合にこの方法を使うと、相手の怒りを矮小化しているかのような印象を与えてしまい、さらに怒りを増大させてしまう可能性があります。
また、「言い方」をジャッジして相手の主張を封じる方法は一般に「トーンポリシング」と呼ばれ、抑圧の手法として知られています。

フィードバックの戦術はあくまで、「対等な関係での、人格攻撃などの”過剰な非難”があった場合」に限定すべきでしょう。

⑤延期の戦術

最後は延期の戦術です。
これはその場で反応をせずに先送りにする戦術です

「あなたの言いたいことはわかりました。ただ、今日は時間がないので後ほど私の考えをお伝えします」というような言い方です。
これだけだと問題をうやむやにしようとしているような印象も与えかねないので、実際に日時を取り決めるといいでしょう。

これは合理的に対処できるよう冷静になる時間を得るための戦術です。

まとめ

ネルソン ジョーンズ(1993)に書かれている内容を参考に、感情的な非難をかわすための戦術をまとめました。

ただ、この記事に書かれた内容は、①相手の怒りが不当あるいは過剰である(自分の行いに正当性がある)といえる場合に、②ある程度対等な人間関係で使える方法でしょう。

相手の怒りに正当性がある場合は、怒りを受け止め謝罪することが必要です。
また、大人と子供、経営者と労働者、マジョリティとマイノリティなどの権威勾配が存在する関係では、③質問の戦術などは立場が弱い者に大きな負担になりますし、④フィードバックの戦術も、先に挙げたようにトーンポリシングになりえます。

あくまで限定的な場面での戦術ですが、相手の過剰な感情的・衝動的な反応を防ぐための方法としては有効であると言えるでしょう。
ではまた♪