被害者を責める心理 公平世界仮説

性犯罪が起こったとき、被害を非難する声が後を絶ちません。
このような歪んだ行動には、どういった背景があるのでしょうか。

性犯罪被害者を攻撃する心理 公平世界仮説

被害者非難に関する最も有名な心理学理論は「公平世界仮説」です。

●公平世界仮説(belief in a just world)(Lerner)
世界は公正にできており、よい人には良いことが起こり、悪い人には悪いことがおこるというような信念。
とりわけ、何らかの不幸の犠牲者には、それなりの特性や能力上の欠陥があるものだとの帰属について、Lernerは「犠牲者の価値低下」(derogation of the victim)とよび、実証的な検討を加えている。
参考:心理学辞典(有斐閣)

日本心理学会のページの説明が分かりやすかったのでそのまま引用します。


出典:人はなぜ被害者を責めるのか|心理学ミュージアム

なぜ公平世界仮説は維持されるか 帰属の誤りについて

公平世界仮説の維持には、帰属の誤りが関係しています。
帰属の誤りとは、人間が何かの原因を推測するときに、理論的な予測に反する偏りが生じてしまう現象です。

帰属の誤りにはいくつか種類がありますが、その代表的なものが基本的な帰属の誤りです。
(「基本的な帰属の誤り」で一つの専門用語です。)

●基本的な帰属の誤り
他者の帰属において、行為者本人の側の内的な原因が重視されすぎて、外的状況要因によって決定された行動からも、行為者の態度や成果などが推測されてしまう傾向をさし、非常に広範にみられる傾向であるためにこのようによばれている。
参考:心理学辞典(有斐閣)

つまり基本的な帰属の誤りとは、ある出来事の原因を予想するときに、その人のせいではない場合でも、その人の態度や内面せいでその出来事が起こったのだと考えてしまう傾向のことです。

犯罪被害を告発した被害者は、注目される存在です。
基本的な帰属の誤りにより、第三者は被害者の態度(服装や行動)に原因があると考えてしまいます。

なぜ帰属の誤りが生じるのか

帰属の誤りがなぜ生じるのかについては様々な説がありますが、主なものとしては情報処理の説明動機付けの説明の2つがあります。

①情報処理:情報処理過程で帰属の誤りが生じてしまうという考え方。帰属の誤りは、人間が直感的な判断をするときに起こる「バグ」のようなもの。
②動機づけ:自尊心を高めたり自我を守るための防衛として帰属の誤りが生じるという考え方。

性犯罪の被害者バッシングに関して言えば、特に②(動機づけ)が大きく関与しているのではないかと思います。

性犯罪における被害者バッシングは、他の犯罪の場合よりも激しいように見えます。
レイプ被害を告発した伊藤詩織さんは殺害予告を受けました。

他の犯罪でも被害者が責められることはありますが(「詐欺にあうなんて自業自得」など)、殺害予告までされるのは異常ではないでしょうか。

この背景には、現状の男性中心社会を守ろうとする動機づけが大きく関係していると考えられます。
男性中心の価値観を守るために被害者を非難する動機づけが生じていると考えれば、性犯罪被害者への過剰なバッシングの説明がつきます。

被害者を責めることの影響

心理学的に人間には被害者を責める傾向があるとしても、それが正当化されるわけではありません。
被害者を責めることがどのような影響をもたらすのかについて理解し、被害者バッシングをやめる必要があります。

被害者バッシングには
・被害者への二次加害につながる恐れ
・加害者の間接的な擁護
の側面があります。

被害者への二次加害

まず、被害者個人を責めることは被害者の傷口を広げる行為です。
被害者はケアされるべき存在です。

被害者非難は被害者を更に苦しめることになります。

加害者の擁護

また、被害者を非難することは、間接的に加害者を擁護することにつながります。
加害者からすれば、勝手に世間が被害者の落ち度を探してバッシングしてくれるなんて願ったり叶ったりでしょう。

またそれだけでなく、被害者非難は潜在的な加害者が実際に犯罪を行うハードルを低くしてしまう可能性があります。
「性犯罪は被害者に落ち度がある」という価値観が蔓延していると、「被害者によって”誘発された”」という加害者の歪んだ考え方を正当化させ、性犯罪を実行することの「言い訳」を与えてしまう恐れがあります。

「被害者の落ち度を指摘することは自衛を促す建設的な行為だ」と考える人もいるようですが、社会的影響を考えると被害者非難には害しかありません。

被害者バッシングの理不尽

被害者は常に被害者自身の責任を問われます。
そして「理想的な被害者」でない場合、その非難の声はさらに大きくなります。
これはあまりににも理不尽です。

先に述べたように、被害者バッシングは被害者を苦しめ、加害者を擁護する行為です。
その補完勢力にならないようにするには、加害者”だけ”を責めることが必要です。