相手を説得したり商品を買ってもらうことは重要なスキルです。
そこで、営業に必要なの理論をまとめました。
フット・イン・ザ・ドア法(段階的要請法)
営業に役立つ方法といえばフット・イン・ザ・ドア法(フリードマンとレイザー,1966)です。日本語では段階的要請法と呼ばれます。
●フット・イン・ザ・ドア法
相手に軽い依頼をして承諾してもらってから本来の依頼をする方法。
相手に軽い依頼をして承諾してもらってから本来の依頼をする方法。
多くの研究がこの方法が有効であることを示しており、ビジネス書にも載っているほど広く広まっています。
フット・イン・ザ・ドア法の効果が生じる理由
フット・イン・ザ・ドア法はなぜ効果があるのでしょうか。その理由には、自己知覚理論、一貫性欲求、社会的規範の3つが挙げられています。
自己知覚理論
私たちは他人を知るために、その人の行動や表情を観察しています。
他人に親切にしていたら「優しい人」、しかめっ面をしていたら「不機嫌」など、その人を観察し、理解に役立てているのです。
一方、自分についてはどうでしょう。
自分のことなのですぐ理解できそうな気がします。
しかし、他人だけでなく、自分についても同様に、自分の行動を観察して理解しているという考え方があります。
これが自己知覚理論(ベム,1972)です。
●自己知覚理論
私たちは自己の行動や状況を観察することで自分の状態を推測しているという考え方。
フット・イン・ザ・ドア法の場面で説明すると、最初の依頼を承諾した人が「あなたはとても親切な人ですね」と言われると、「自分は親切な人間だ」という認識が強まります。
すると次に依頼された内容についても「自分は親切な人間だから次の依頼にも応じるべきだ」という感覚を持ちやすいということです。
一貫性欲求
私たちは論理的に一貫性のある行動パターンを望んでいます。昨日優しかった人が今日も優しいだろうと予測することは当然です。
この考えの背景には一貫性欲求(チャルディーニ,1991)があるからだと考えられています。
フット・イン・ザ・ドア法の場面では、最初の依頼に応じた人は次の依頼にも応じることが一貫した行動であるといえます。
「自分が一貫した行動をとることが望ましい」という感覚があるからこそ、第二依頼にも応じやすくなるというわけです。
社会的規範
私たちの社会には、困っている人を互いに助けるべきだという社会的な規範があります。そのため、依頼された内容が社会的に望ましい物である場合、社会的規範に則って「相手を助けてあげよう」という気持ちがわきやすいということもあります。
フット・イン・ザ・ドア法の効果を高める方法
フット・イン・ザ・ドア法は多くの研究で有効性が確認されており、バーガー(1999)はそれらの結果に基づき、フット・イン・ザ・ドア法の効果を高める方法をまとめました。最初の依頼を受け手に実際に遂行させる
フット・イン・ザ・ドア法は最初に軽い依頼を承諾してもらうことが前提となっています。それは口先だけでなく、実際に行動してもらうことが重要になります。
これにより受け手の関わりが深くなり、本題の依頼も承諾しやすくなるというわけです。
最初の依頼遂行後に「あなたは親切/協力的な人だ」と伝える
最初の依頼をしてもらったら、相手に「あなたがとても親切で助かった。ありがとう。」などと伝えましょう。これは相手に”自分は親切な人間だ”という自己認識を持ってもらうという役割があります。
すると次の依頼を断りにくくなります。
最初の依頼と関連付けて本題の依頼をする
最初の依頼と本題の依頼が関連していることを受け手に理解してもらうようにすると効果が高まります。
フット・イン・ザ・ドア法の効果が低下する要因
逆にフット・イン・ザ・ドア法の効果を低下させる要因も検討されています(バーガー,1999)
①最初の依頼を承諾してくれる人がほとんどいないことを相手に伝える。
②最初の依頼の遂行に対して金銭を提供する。
③最初の依頼の直後に、異なる人間が本題の依頼をする。
④同一人物に何度も畳みかけて依頼する。
「最初の依頼に承諾してもらい、その流れを使って次の依頼を受けてもらう」ことを妨げるようなことは控えた方がいいでしょう。
ドア・イン・ザ・フェイス法(譲歩誘導法)
フット・イン・ザ・ドア法とともに多くの研究がその有効性を示しているのが、ドア・イン・ザ・フェイス法(チャルディーニら,1975)です。
日本語では譲歩誘導法と呼ばれます。
●ドア・イン・ザ・フェイス法
フット・イン・ザ・ドア法とは逆に、受け手が拒否すると予想されるような大きい依頼をした後、本題の依頼をする方法。
ドア・イン・ザ・フェイス法の効果が生じる理由
ドア・イン・ザ・フェイス法の効果が生じる理由は、譲歩の返報性と罪悪感で説明されています。
譲歩の返報性
一つ目はチャルディーニ(1975)が指摘した譲歩の返報性です。
ドア・イン・ザ・フェイス法では最初の依頼よりも次の依頼は小さいものになっており、これは相手には譲歩したように映ります。
これは「譲歩してくれたのだから自分も譲歩してあげなければ」という感情を抱かせることにつながります。
そして「譲歩した結果」第二依頼に応じてくれるというわけです。
ドア・イン・ザ・フェイス法では最初の依頼よりも次の依頼は小さいものになっており、これは相手には譲歩したように映ります。
これは「譲歩してくれたのだから自分も譲歩してあげなければ」という感情を抱かせることにつながります。
そして「譲歩した結果」第二依頼に応じてくれるというわけです。
罪悪感の喚起
二つ目は罪悪感の喚起とその低減(オキーフとヘイル,1998;オキーフ,2000,2002)です。
依頼を断るということは多少の罪悪感を抱く行為です。
罪悪感はあまり気持ちのいい感情ではなく、それを解消したいという欲求が生まれます。
そこで第二依頼を提示することで、罪悪感の解消のために依頼を受けてしまうということです。
依頼を断るということは多少の罪悪感を抱く行為です。
罪悪感はあまり気持ちのいい感情ではなく、それを解消したいという欲求が生まれます。
そこで第二依頼を提示することで、罪悪感の解消のために依頼を受けてしまうということです。
効果を高める方法
ドア・イン・ザ・フェイス法の効果を高める方法は、オキーフとヘイル(1998)によって明らかにされています。
同じ人が両方の依頼をする
最初の依頼と本題の依頼を関連付けるため、同じ人が依頼することが大切です。
両方の依頼によって利益を受ける人や団体が同じであることも重要です。
依頼が社会的に正しい内容である
依頼した内容が反社会的な内容だと、承諾を得ることは難しくなります。
対面状況で依頼する
依頼は電話やメールで行うこともできますが、対面状況だとより効果的です。
最初の依頼の直後に本題の依頼をする
ドア・イン・ザ・フェイス法では、最初に大きい依頼をした後に本題の依頼をします。
そのため、大きい依頼から小さい依頼に変化したことが分かるよう、続けて依頼をすると効果が高まります。
フット・イン・ザ・ドアとドア・イン・ザ・フェイス
フット・イン・ザ・ドア法とドア・イン・ザ・フェイス法は逆のアプローチをしていることになるので、矛盾しているように感じるかもしれません。
両者の発生原理が異なっているので別の手段であると考えた方がよさそうです。
ただ、概してフット・イン・ザ・ドア法の方が効果が安定していることがいくつかの研究で示されています(今井,2003a)。
ロー・ボール法(特典除去法)
ロー・ボール法(チャルディーニら,1978:バーガーとペティ,1981)は販売場面でよく使われる方法です。
魅力的な状況を「低い球を投げる(ロー・ボール)」と表現し、低い球は取りやすい=承諾しやすいという意味でこの名前が付けられています。
人は一度承諾してしまうと、たとえ状況が悪くなっても断りにくくなるということを利用した方法です。
しかし、嘘をついて無理やり承諾させるというわけではありません。
例えば、このような場面が考えられます。
これは卑怯なやり方なので、多用すると不信感を抱かれる可能性があります。
●ロー・ボール法
特典を使い魅力的な状況を作って依頼に承諾してもらった後、その特典を取り去ってしまう方法。
特典を使い魅力的な状況を作って依頼に承諾してもらった後、その特典を取り去ってしまう方法。
魅力的な状況を「低い球を投げる(ロー・ボール)」と表現し、低い球は取りやすい=承諾しやすいという意味でこの名前が付けられています。
人は一度承諾してしまうと、たとえ状況が悪くなっても断りにくくなるということを利用した方法です。
しかし、嘘をついて無理やり承諾させるというわけではありません。
例えば、このような場面が考えられます。
ある販売員が購入を迷っているお客に対し、いろいろなオプションを付けることを提案し、そのお客が「それなら・・・」と購入を決めます。
するとその販売員は「オプションについて上司に確認を取ってきます」と席を外します。
戻ってきた販売員は「申し訳ございません。私の判断でこのオプションをつけると申し上げましたが、上司にこの値段では無理だと怒られてしまいました…」と言い出す。
もちろんこの段階で購入をやめることも可能ですが、一度買うと言ってしまった手前、後に引けなくなってしうまう人もいるでしょう。するとその販売員は「オプションについて上司に確認を取ってきます」と席を外します。
戻ってきた販売員は「申し訳ございません。私の判断でこのオプションをつけると申し上げましたが、上司にこの値段では無理だと怒られてしまいました…」と言い出す。
これは卑怯なやり方なので、多用すると不信感を抱かれる可能性があります。
ローボール法が効果を持つ理由
ロー・ボール法が効果を持つ理由にはコミットメントが挙げられています。
【コミットメント】
行動を通して、ある事柄にかかわりを持つこと。
頭の中で考えるだけでなく、周囲の人に分かるように話したり行動したりすること。
人は自分の行動(コミットメント)に固執し、その後に一貫した行動をとりやすいということです。行動を通して、ある事柄にかかわりを持つこと。
頭の中で考えるだけでなく、周囲の人に分かるように話したり行動したりすること。
ザッツ・ノット・オール法(特典付加法)
ザッツ・ノット・オール法(バーガー,1986)も販売場面でよく使用されているほうほうで、ローボールとは逆に得点を付ける方法です。
お客さんにとっては特典が付くのでお得感を感じ、購入しようという気持ちが高くなります。
特典は物に限らず、値引きをすることなども含まれます。
そのため、本来の値段よりも高い値段を最初に提示し、仕方なく値引きしたという態度で本来の値段を示すこともザッツ・ノット・オール法に当たります。
販売者が特典を付けてくれた(=譲歩してくれた)ので購入者も譲歩して購入する動機づけが高まったというわけです。
最初に提示された条件が基準となり、それよりも有利な条件を提示されると購入しやすい条件になったと感じます。
そのため購入が促されるのです。
●ザッツ・ノット・オール法
値段がやや高めに設定されている商品をお客が購入しようか迷っているときに、特典を付けて購入を促す方法。
値段がやや高めに設定されている商品をお客が購入しようか迷っているときに、特典を付けて購入を促す方法。
お客さんにとっては特典が付くのでお得感を感じ、購入しようという気持ちが高くなります。
特典は物に限らず、値引きをすることなども含まれます。
そのため、本来の値段よりも高い値段を最初に提示し、仕方なく値引きしたという態度で本来の値段を示すこともザッツ・ノット・オール法に当たります。
ザッツ・ノット・オール法が効果を持つ理由
ザッツ・ノット・オール法の有効性は、返報性の原理と係留点という2点で説明されています。返報性の原理
返報性とは「相手がしてくれたことを自分もしてあげる」という傾向のことです。販売者が特典を付けてくれた(=譲歩してくれた)ので購入者も譲歩して購入する動機づけが高まったというわけです。
係留点
係留点とは、もともとは船が碇を降ろしている地点のことを指しますが、ここでは判断の基準点という意味を持ちます。最初に提示された条件が基準となり、それよりも有利な条件を提示されると購入しやすい条件になったと感じます。
そのため購入が促されるのです。
まとめ
誰かを説得したり何かを売ったりということは日常的に必要なスキルです。
理論をきちんと理解し、方法を適切に使いこなせれば大きな武器になるはずです!
是非参考にしてみてください。
ではまた♪
理論をきちんと理解し、方法を適切に使いこなせれば大きな武器になるはずです!
是非参考にしてみてください。
ではまた♪